『浅田家!』を観て思う「日本人であること」と「避けられない3.11」

家族のソトとウチの境界線にあるカメラ

以前期待の映画でピックアップしたとおり、とても良い家族を観てきました。

「少し変だが、なんか良い。」

家族なんて大抵、家族の外から見れば恥ずかしいところや変なところを持っているもので、家族の中にいすぎると気づかないものです。

そのソトとウチの境目にカメラを置くコトで、自分の家族の独特の面白みと暖かさを世間と共有するというのは気づきそうで気づかないなと率直に感じました。

「少しこっ恥ずかしい」そんなところに独特の良さがあったりする

ビジネス業界でマーケティングスペシャリストの森岡毅さん1という方がいるのですが、その森岡さんが(確か)丸亀製麺さんとのお仕事の話しで、「自分の会社の良いところというのは、少し恥ずかしいと思えるところに隠れているものだったりする」と話していたことを思い出しました。

アートやビジネス、もとよりエンターテイメントすべてに共通することでしょう。

短所は長所と背中合わせと言いますが、自分の恥ずかしいところ、家族の恥ずかしいところ、それが独特で唯一無二の良いものだったりするのかもしれません。

この映画を観て、身近なものにこそ、自分なりの、自分しかできない、社会的な価値創造があるんだろうなと、近年のテクノロジー進化に隠れたものを立ち止まって見直す気持ちになりました。

「浅田家!」を観て、感動できる幸せに感謝を。

そんな感想を持ちつつも、観終わった直後で感じたことは単純に
「これを観て、感動出来る自分は家族という関係性や環境においては恵まれているのだろう」ということ。

もちろん、歩んできた人生の価値とかそういう話でもなく、単純に幸せの比較なんてできるものではないです。

家族が温かいものであるという感覚を肌で持っていないと『浅田家!』の物語を素直に受け取ることはできないと思いますし、3.11における出来事を私は東京にいて味わったものの、あの津波を間近で味わった人とは天地雲泥の差がある感覚だと思います。

東日本大震災3.11を表現するのは難しかったでしょう。
何を描いても、千差万別のほんのわずかしか表現できず、人の数だけ感情や持っているモノが異なります。

批判や異議が出そうな議題ですが、日本としては避けられない事実であり、あらためて日本人のアイデンティティに組み込まなくてはいけない事柄だったことを認識しました。

邦画以上に日本人の映画

映画館でひと席空いていたのが幸いして、私は『浅田家!』3.11の描写で感情を殺すことなく泣くことができました。でも、それは鮮度を味わったからです。

つまりは、私の中で3.11が風化していたのだと感じました。

2020年2月時点でも避難生活者は4万8千人。まだ原発影響で帰宅できない地域はあります。
原発影響、水産における風評被害などまだまだ尾を引いているものもあります。

多くの家族の大事な人たちがあの瞬間に亡くなった。
その事実は踏まえて生きていかなくてはならないと。

私の中で『浅田家!』は3.11の描写がやはり強く残りました。

ですが、家族・浅田家・浅田政志という題材で物語にしたことで決して悲観的にならず、身近なものにもあらためてさりげない愛を注げる人でいたいと思えました。

日常と非日常における家族をテーマにしたドラマはとても素晴らしかったと思いますし、二宮和也の演技が自分は好きだなとあらためて実感しました。

日本人が好きになる映画だと思います。ぜひ観ていただきたい。

『浅田家!』作品紹介

監督:中野量太
脚本:中野量太、菅野友恵
出演:二宮和也、黒木華、菅田将暉、風吹ジュン、平田満、妻夫木聡
配給:東映(2020年・127分)

STORY
幼いころ、写真好きの父からカメラを譲ってもらった政志(二宮和也)は、昔から写真を撮るのが大好きだった。そんな彼が、家族全員を巻き込んで、消防士、レーサー、ヒーロー、大食い選手権……。それぞれが“なりたかった職業”“やってみたかったこと”をテーマにコスプレし、その姿を撮影したユニークすぎる《家族写真》が、なんと写真界の芥川賞・木村伊兵衛写真賞を受賞! 受賞をきっかけに日本中の家族から撮影依頼を受け、写真家としてようやく軌道に乗り始めたとき、東日本大震災が起こる―― 。
かつて撮影した家族の安否を確かめるために向かった被災地で、政志が目にしたのは、家族や家を失った人々の姿だった。

「家族ってなんだろう?」
「写真家の自分にできることは何だろう?」

シャッターを切ることができず、自問自答をくり返す政志だったが、ある時、津波で泥だらけになった写真を一枚一枚洗って、家族の元に返すボランティア活動に励む人々と出会う。彼らと共に《写真洗浄》を続け、そこで写真を見つけ嬉しそうに帰っていく人々の笑顔に触れることで、次第に《写真の持つチカラ》を信じられるようになる。そんな時、一人の少女が現れる。

「私も家族写真を撮って欲しい!」
それは、津波で父親を失った少女の願いだった―― 。

(公式サイトより)

  1. 日本を代表するマーケター、戦略家、実業家。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン再建させた立役者として有名。現在は株式会社刀代表取締役CEOとして多くの企業支援や地方創生事業を手掛けている。