『ジョゼと虎と魚たち』作画もストーリーも色彩に溢れた夢のようなアニメーション【東京国際映画祭レポート】

あらすじ

ある日、大学生の恒夫が助けた車椅子の女性、ジョゼ。
夢のために貯金したい恒夫は、お婆さんとジョゼとの2人暮らしのその家でジョゼの 言うことを聞く”管理人”のバイトを始める。
偏屈で口の悪いジョゼだが、”管理人”を通して外の世界を徐々に知り始める。

外の世界への一歩は、輝かしい一面と、その一方、残酷な一面も見せることに気づくジョゼ。
世界の広がりを刺激し合える大事な大事な誰かと、自分の夢と、そして障害と。

17年前に涙したあのラブストーリーをアニメーションで水々しくリバイバル。

実写映画『ジョゼと虎と魚たち』との比較 – 現実的で錆のあるラブロマンス

妻夫木聡、池脇千鶴のお二人が主演。犬童一心監督作品で2003年に公開された実写映画は、あくまでも現実的なドラマにこだわり描かれていたように思います。

恒夫は”出来た人”ではなく、エッチが好きで”やりたい”が先にくるちゃらんぽらん大学生。でも、決して悪いやつではなく人懐っこくて、図々しい。ジョゼとも接点を持ち、距離を一方的に詰める。そのうち同情が愛情になりと、、、恋の始まりもドラマチックではなく、地に足のついた設定に思えます。

対する、ジョゼも同居しているお婆ちゃんからは”壊れ物”と扱われています。
アニメ版では外には怖いものがいるからと教えを受けているかたちですが、実写版は「他所様にお見せできない」というお婆ちゃんの建前が外出をさせてもらえない理由になっています。

また実写版ラストは、恒夫が障害を持つジョゼと一緒に生きていこうとする決断ができず、最後には別れることになります。その後、ジョゼは外の世界を電動車椅子で走っているシーンでエンドロールを迎えるという。バッドエンドではないですが、最高のエンディングともよべないかたちで、それがまた観る側の心を締め付けました。

犬童一心監督の映画らしい感じがします。

当時は池脇千鶴がヌードになることが話題で先行しましたが、くるりの主題歌、主演妻夫木聡、彼女役に上野樹里と、邦画としては大作扱いでプロモーションしていた記憶があります。

その実写映画を、アニメ版を拝見したあとに10年以上ぶりに見返しました。

当時の妻夫木聡は、当時のTHE若者の象徴。持っている色が良い意味でまったくない、白紙で作品の中でその登場人物に自然と染まれる俳優さんですね。

ちなみに、映画版では恒夫のセフレ役で江口のりこも出演しています。ショートカットでかっこいいです。

アニメ『ジョゼと虎と魚たち』が魅せるカラフルなラブロマンス

対して、今回のアニメ版ですが、映画とは真逆の空気感を持っている作品でした。

恒夫は大学生ですが、将来はメキシコにしか生息しない魚を見るという夢を持っています。そのために研究室に入りながら論文を書く一方、バイトも頑張っている好青年です。ジョゼはひねくれ感と関西弁は映画と変わらないですが、金髪で人形のような可愛らしさを持っています。

その2人に中川大志と清原果耶が声優として息を吹き込み、恒夫のまっすぐさとジョゼの純粋さを見事に表現しています。

ジョゼは海へのあこがれを持ち、独学で絵を書いて、外の世界へのあこがれを隠れてキャンパスに表現している女性です。恒夫もジョゼが海を好きだということを知り、徐々に距離が近づいていきます。

一部のコアな設定と大方の序盤の流れのみが映画と同じくして、それ以外は全く別の作品です。あえてこの対比を意識しなくても、意識してもどちらでも楽しめると思います。

若い方たちはそのままアニメーションを観てもらって良いと思いますし、中年以上はあらためて事前、事後で見返してみるのも楽しいと思います。

ポップでカラフル、心温まる真っ直ぐな映画です。私はこの『ジョゼとトラと魚たち』をあえてアニメにしたことが素晴らしい選択だったと思います。

この切り口とこのストーリーならアニメのほうが表現として適していると感じられる全く違う『ジョゼとトラと魚たち』。

きっと明るい気持ちになれるはずです。

『ジョゼと虎と魚たち』(アニメ映画)

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』本予告60秒

監督:タムラコータロー(『ノラガミ』『おおかみこどもの雨と雪(助監督)』)
脚本:桑村さやか(『ストロボ・エッジ』)
原作:田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」(角川文庫刊)

アニメーション制作:ボンズ(『交響詩篇エウレカセブン』『僕のヒーローアカデミア』)
キャスト(声):中川大志、清原果耶、宮本侑芽、興津和幸、Lynn

2020年12月25日公開予定