『ホモ・サピエンスの涙』 – 博物館の「人間コーナー」に飾るべき映像集【11月20日公開作品】

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第76回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(最優秀監督賞)受賞作品、ロイ・アンダーソン監督の『ホモ・サピエンスの涙』(公式サイト)。映像の魔術師が、この時代を生きる全人類に送る – 愛と希望を込めた、万華鏡のような映像詩。

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本作は公開前に試写で拝見させて頂き、個人的には響くものがわずかだったので、正直静観してました。
ですが公開した今現在、(僕以外の)世間の評価がすごく高いので正直驚いています。監督と同じスウェーデンの血を引く映画評論家 LiLiCOさん や俳優の 斎藤工さん 、タレントの ふかわりょうさん など多くの著名人も本作について称賛のコメントを出しているのを拝見します。

感性は人それぞれでよいと思っているのですが、もし不勉強であればそれはもったいないので可能な限り復習はしようと思いまして、そのレポート的にこれを書いています。

過去の我にかえり、もしこういう予備知識を備えて観賞したらどうだったんだろうという情報を揃えてみました。少しでもお役に立てばうれしいです。

僕が感じた『ホモ・サピエンスの涙』について正直な感想

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本作について、僕は映画としてはあまり楽しいとは感じませんでした。面白くはないが、”斬新で印象的なアート映画””というのが正直な感想でした。

まず映画が始まって最初に感じたのが違和感です。スクリーン上に映し出される色の持つ温度感というか全体があまりに無機質なのです。
出だしから足が地についていない感覚でスタートしてしまうので、正直気持ち悪さがありました。(事前にそれくらい予告編で感じておけよというのは今思う所)
動くのは登場人物のみ。絵の中の人物が動いているだけの映画です。

良くも悪くも短編集です。一部連なるシーンもありますが、33シーンが個々に成立している映画です。
つまらないシーンが重ねて繋がると少し退屈な時間が長くなります。

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事前に頭に入れておくと良いこと

振り返るに、僕の反省から想定できる事前準備(心の準備、知っておくこと)はこんなところだと思っています。

  • 予告編をちゃんと観て質感に慣れておく。
  • いくつかの場面のモチーフになっている(インスパイアされている)絵画を知っておく。
  • 短編集のような映画であり、一貫した長編物語ではない。
  • 絵画のような映像と全体の質感がロイ・アンダーソンの特徴。
  • 良くも悪くも映っているのは”人間そのもの”。
  • 全33シーンすべてをワンシーンワンカット撮影。
  • 笑いを目的としないコントのような至極シュールな映像集。
  • 人それぞれに、つまらないシーンもある。3分程度我慢する覚悟を。
  • どこがつまらなかったか、興味があったかは語りたくなるかも。
  • でも、友達を誘うのは慎重に。

僕としては「人間が絶滅したのち、博物館の”人間コーナー”に置かれる映像」と勝手に評しています。これは人間の映画です。だとすると好き嫌いも別れるのは納得がいく気がします。

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記憶に残るほぼすべての場面、思い出せるお気に入りのシーン。

最後に。

これはこの文章を書いていて気づいたことなんですが、僕の個人的評価に反して、僕の記憶にはあらかたすべてのシーンが比較的鮮明に残っていることに驚かされました。
どういう人間でどんなことを話していたか、どんな行動をしていたかがイメージできる部分が多かったです。

特に、このふたつシーン。

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こちらはBGM(All of me)が後ろに流れ、シャンパンが好きな女性を男性が暖かい眼差しでじっと見つめているシーン。

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もうひとつこちらは、神を信じられなくなった神父がミサの出番を前に虚無感に苛まれルコールに溺れているシーン。


無償の愛と、無常の悲しみと、どちらも人間の真実の姿で、その人間たちに親近感を沸かせます。

他にも、銀行を信じられずベッドにお金を隠しているが不安で十分に眠れない男など、なにかしら心に引っかかる場面や人が出てくると思います。

総評として「面白い」とは言えない僕でしたので、おそらく人は選ぶのでしょうが、良くも悪くもインパクトが残る作品だと思いますし、観終わった後何かしら言葉が出てきやすい映画だと思っています。

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『ホモ・サピエンスの涙』予告編